スペシャルインタビュー
「学校の守護神として最大限できること」

〔プロフィール〕高知大学医学部卒業 米国家庭医療学専門医、米国認定救急救命士、ハワイ州医師免許。 亀田総合病院総合医療部医長、東川口病院相互診療科部長などを経て、現在、たけしファミリークリニック院長・ 千葉大学医学部臨床教授。千葉県内で校医としても活躍。


雑誌『健』にて『フィジカルアセスメントの“ホント”のところ』を連載し、千葉県内で校医としても活躍。

 

常に現場に寄り添った講義内容で、全国で開催しているジャパンライムの養護向けセミナーでも大好評を博している北垣先生に、養護教諭に求められることについて、お話を伺いました!

 

 

学校での救急対応の難しさについて

電車や飛行機に乗ったとき、「お医者様はいらっしゃいませんか」というアナウンスを聞いたことはありますか?

 

それに名乗り出るお医者さんの率は、実は3割程度なんです。びっくりですよね。

 

逆に看護士さんは7・8割が応じるそうですが、医者が手を挙げないのはなぜかというと、『怖い』からです。

皮膚科のお医者さんが息苦しさを感じている患者さんを診察するのは嫌ですよね。ですから、学校での病気対応はとても難しいということが言いたいわけです。

 

学校での病気対応が難しい理由として、

①発症、受傷してすぐのため症状が出にくい

②生徒がはっきり症状説明できない

③検査手段がない

相談できる専門家がいない

⑤あまりにも忙しいため臨床を勉強することができない

⑥生徒のケアより親のケアが心配…などが理由として挙げられます。

 

それでは、養護教諭に求められる臨床の能力とは何なのでしょうか。

 

 

 

養護教諭に求められる臨床能力とは

まずは、緊急の際に落ち着いて行動できるよう、緊急疾患の現場対応、応急処置をしっかりと頭に叩き込むことが大切です。

 

そして受診を勧める判断、帰宅させていいかの判断ですが、これはとても難しいですよね。

頭部外傷で本人はケロッとしているため、経過を見るか病院に行かせるべきかの判断を迫られたとします。

 

判断をして違う場合もあるかもしれません。

そんなときも『もうダメだ』と落ち込み過ぎず、自分の判断は間違っていなかったと、過信でもいいので自信を持ってください。

そうしないと一回のミステイクで消極的になってしまいます。

 

また生徒が『こんな痛み初めて』と訴えてきたとき、酸素飽和度が低下(息苦しい)した状態のときは、問診は必要ありませんので、すぐに病院に連れて行ってあげることも重要です。

 

ほかにもこんな症状が見られたときは、救急搬送を視野に入れてください。

①意識がない

②痙攣している

③出血が止まらない

④血を吐いた

⑤めまいがして立てない

⑥強烈な痛みが続くとき

 

 

 

病院との情報共有こそ復習の場

養護教諭の皆さんは、外傷、感染症、熱中症、うつ病など、様々な疾患に対応しているため、ストレスが非常に多いと思います。

将来的に訴えられるんじゃないかという怖さや責任感もあると思いますが、怖がることはありません。

 

臨床というのは、自分で道筋を立てて、その時その時で何を考えたかをしっかりと残しておくことが大事です。

 

例えば、しばらく救急車を呼ばずに自分で対応した場合、その理由を養護の観察記録などに残しておく。

そして、その情報を病院と共有することが重要です。

 

病院に紹介する際にも必ず一言、自分はどう思ったのかを書き記し、生徒に持たせてください。

紹介状というのは出したら終わりではなく、紹介先の病院から返事がくるものなんです。

僕らも同じで、それによって「この診断を下したけど、こうだったのか」と学ぶことができる。

一行二行でいいので、手紙に書き、復習することを心掛けてみてください。

 

 養護教諭の先生方はやる気のある方が多いですが、継続治療は基本的に病院、保護者に任せてください。

どの疾患に関しても、それは先生方の範疇ではありません。

 

病院に行った後、どういう検査をして、どういう治療をしたかという勉強は常に必要ですが、これは是非肝に銘じておいていただければと思います。

 


総合診療医北垣毅の養護教諭フィジカルアセスメントシリーズ